タバコ・禁煙に関する3ストーリー。やめた人もやめない人も楽しめる!?
このサイト「禁煙トップ」は禁煙情報サイトですが、いつもいつも禁煙推奨やタバコの害に関するニュースばかりでは面白くありません。
本日はちょっと趣向を変えて、本のご紹介です。タバコに関連はするけれど、決して禁煙本ではない、そんなタバコに関する3つのストーリー。禁煙した人も、未だタバコを吸っている人も、タバコ経験者であればなお楽しめるはずです。
「煙草の害について」 アントン・チェーホフ
「かもめ」「ワーニャおじさん」「三人姉妹」「桜の園」で知られるロシアの劇作家アントン・チェーホフの短編戯曲。煙草の害とは何の関係もない(笑)一幕劇です。
主人公(というか、唯一の登場人物)ニューヒンは、妻の尻に敷かれっぱなしの恐妻家だ。初等音楽学校と全寮制女学校を経営する町の実力者でもある妻は、ニューヒンに「タバコの害について」の講演を行うように命じる。妻の命とあっては断る術もなく、くたびれた燕尾服姿で登壇するニューヒン。威厳たっぷりに登場するものの、彼の講演は脱線しまくり、「タバコの害」どころか、自分がいかに妻に虐げられているかという愚痴に話はそれていく…。
アントン・チェーホフといえば「文豪」のイメージが強いですが、本作は全編笑いの連続。東京乾電池の柄本明さんは20分程度のこの戯曲を1時間あまりのひとり芝居にし、恐妻家の主人公ニューヒンを演じています。風貌といいキャラクターといいこの爆笑喜劇にぴったり。機会があれば舞台もぜひご覧ください。
『チェーホフ全集11』収録
アントン・チェーホフ 著 , 松下 裕 翻訳
出版社:ちくま文庫

煙草の花
「煙草と悪魔」 芥川龍之介
日本にタバコを広めたのは悪魔だという伝説をもとに芥川龍之介が創作したユニークな短編小説。
フランシスコ・ザビエルの一行に紛れて日本にやって来た悪魔。もちろん、日本人を誘惑するためだ。しかし日本にはまだキリシタンがいないので誘惑のしようがない。そこで悪魔は暇つぶしに畑を耕し、タバコの種をまいた。夏の終わり、その畑に咲く見たことも無い花に興味をもったのはザビエルの教化でキリシタンとなったある牛商人。悪魔は彼に取引を持ちかける。『この花の名を3日以内に答えられたら、この畑にはえているものをすべてあげましょう。しかし当たらなかったらあなたの身体と魂を貰いますよ』と…。
せっせと畑を耕したりのどかな梵鐘の音に心ゆるませたり、この小説の悪魔はどこかユーモアが漂い憎めないキャラクター。「煙草があまねく日本全土に普及したところを見れば、牛商人に負けたはずの悪魔は勝っていたのではないだろうか」というアイロニカルなオチは、いかにも芥川らしい。
『奉教人の死・煙草と悪魔 他11篇』収録
芥川龍之介 著
出版社:岩波書店
禁煙小説 垣谷 美雨

禁煙したい女性
2005年「竜巻ガール」で第27回小説推理新人賞を受賞した垣谷美雨の小説。2006年に刊行された「優しい悪魔」を改題したもの。
喫煙者には非常に肩身の狭い時代。二十年間禁煙に失敗し続けている主人公早智子は、同じ喫煙者だった女子社員が次々と禁煙に成功する中ついに本気で禁煙を決意する。禁煙本をはじめ、禁煙ガムやニコチンパッチなどさまざまな禁煙方法を試し、そのたび挫折してきた早智子だったが、ついに意を決して禁煙外来に向かう…。
タイトルそのままの禁煙小説。もしもの世界を描く「if小説」と呼ばれる作品が多い作者だが、この小説はニコチン中毒のつらさや喫煙者にはきびしい社会環境をリアルに描く。
『禁煙小説』(双葉文庫)
垣谷 美雨 著
出版社:双葉社
終わりに
いかがでしょう。どれもなかなか興味深い内容ではないでしょうか。チェーホフは切るに切れない悪妻との腐れ縁をタバコの害や依存性をモチーフに語り、芥川はタバコを悪魔の誘惑に例えました。柿谷美雨の「禁煙小説」も、もとのタイトルは「やさしい悪魔」。タバコを悪魔に例え、禁煙のつらさと喫煙のもたらす恐怖をリアルに描いています。
3つの作品はまったく別のテイストで、通点はタバコというキーワードのみですが禁煙経験者こそ、共感し、笑え、そして身につまされる内容かもしれません。
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