加熱式タバコ「IQOS(アイコス)」は2015年9月の発売以来、瞬く間に人気商品となり、2017年7月現在でもまだまだ入手困難な状況が続いています。開発したフィリップモリス社は、一般のタバコに比べて燃焼により発生するタールなどの有害成分が約90%もカットされ、副流煙もほとんど出ないと主張しており、火を使わない安全性やPM社の謳う健康面でのメリットから人気に火が付いたようです。
では実際に加熱式タバコとはどういうものなのか、「禁煙」の立場から考えてみたいと思います。
加熱式タバコの種類
現在、日本で販売されている加熱式タバコはフィリップモリス社の「IQOS(アイコス)」、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社の「glo(グロー)」、そしてJTの「プルームテック」の3種類。2017年7月時点でいずれも予約や購入希望者が殺到し、なかなか手に入りづらい状況ですが、先行の「IQOS(アイコス)」は町の喫煙所などでも使っている人を見かけることがあります。
加熱式タバコのメカニズム
一般的な紙巻きタバコは刻んだタバコの葉を紙に巻き、これを燃やすことで出る煙を吸います。タバコの葉には有毒で習慣性の強いニコチンが含まれているため、常習的に喫煙を繰り返すとニコチン依存になります。また、燃焼する際に50種類以上の発がん性物質をはじめ4000種類以上の有害物質が含まれた「タール」が発生します。
一方、加熱式タバコは製品によりそれぞれ使用方法や形状は違っていますが、基本的にはタバコ葉を電気で加熱することで成分を蒸発させ、その気化した蒸気を吸引するしくみです。火を使わないため燃焼によって生じるタールが大幅にカットされ、紙巻きタバコに比べ有害物質の約90%がカットされていると言われています。ただし、ニコチンはしっかりと含有していますので、ニコチン依存の危険性は紙巻きタバコとまったく同じです。
ちなみにVAPE(ベイプ)と呼ばれる電子タバコは香料などが入ったキッド(液体)を電熱線で加熱することで霧状の水蒸気を発生させるものが多く、ニコチンは入っていません※。
※海外ではニコチン入りのものもありますが、日本では薬事法で禁止されています。
加熱式タバコは『安全なタバコ』か?
なぜ今
確かに加熱式タバコは火を使いません。しかしリチウムイオンを使用したスマホや電子タバコの爆発事故のニュースもありますので、同じくリチウムイオンを使用した加熱式タバコにそのリスクがないとは言い切れません。また健康面でも不安は残っており、海外では「IQOS(アイコス)」にも発がん性物質が含まれている」といった報道もありましたし、ニコチンを含有している時点でニコチン依存の危険性は紙巻きタバコと同じです。副流煙や灰が出ないとも言われていますが、「IQOS(アイコス)」喫煙者の口からはそれなりの煙(水蒸気)が吐き出されますし、吸い殻も出ます。…メーカーの謳うメリットがそのまますべて正しいと言うには疑問が残ります。
要するにまだ登場したばかりの新しいデバイスに対して検証が間に合っていないのが実情です。たとえば、加熱式タバコは路上喫煙の規制対象かどうかについても統一見解はなく、各自治体で判断が分かれているのが現状なのです。
おわりに
ただひとつはっきりしていることは、加熱式タバコは禁煙グッズでもなければタバコの代替品でもなく、中毒性の高いニコチンを含有した、れっきとした「タバコである」という点です。今後、加熱式タバコにどのような評価がなされるかはわかりませんが、議論を追うより先に、喫煙という習慣から離れてしまった方が、少なくとも健康のためにはメリットがあることは言うまでもありません。
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